着物のたたみ方完全解説!初心者もシワなく仕上がる本だたみの極意
成人式や結婚式、卒業式といったハレの日を彩った着物。脱いだ後の着物を前に、「どう畳めばいいのか分からない」「適当に折ってシワを作ってしまったらどうしよう」と途方に暮れる人は少なくありません。絹という繊細な天然素材で作られた着物は、洋服感覚で適当に畳んでしまうと、取り返しのつかない折ジワや箔落ちの原因となります。
しかし、着物のたたみ方は一度「折り目の構造(縫い目)」さえ理解してしまえば、決して難しい作業ではありません。全国の呉服店や悉皆(しっかい)職人が実践する基本手順「本だたみ」をマスターすれば、初心者でもわずか数分で、シワ一つない美しい状態に仕上がります。長襦袢や振袖、羽織の個別ルールから、たとう紙への正しい収納法まで、現場のプロが実践する決定的なテクニックを体系的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:基本の「本だたみ」は縫い目通りに折るのが鉄則。着物の頭を左、裾を右に置き、衽(おくみ)と衿を正しく処理すれば初心者でもシワを防げる。
- 要点2:振袖や訪問着は袖丈の長さに応じた折り返しが必要。外出先での一時保管には簡略版の「袖だたみ」が活躍する。
- 要点3:脱いだ直後の陰干し(湿気抜き)と「たとう紙」の定期交換が、2026年現在も着物のカビ・黄変を防ぐ最大の防護策である。
【図解級のわかりやすさ】初心者でも失敗しない「本だたみ」の完全手順
着物の最も標準的かつ格調高い畳み方が「本だたみ(本畳み)」です。訪問着、留袖、小紋、紬など、ほぼすべての着物に適用されます。作業を始める前に、必ず清潔な敷物(衣装敷き、または清潔なシーツ)を床に広げ、手袋を着用するか、手をしっかり洗って乾燥させておきましょう。
ステップ1:着物を平らに広げ、向きを整える
着物の「頭(衿側)を左手側、裾を右手側」にして、自分の前に平らに広げます。このとき、自分から見て手前側が「下前(右半身)」、奥側が「上前(左半身)」になります。背中の中心にある縫い目(背縫い)をまっすぐ伸ばすことが、全体の歪みをなくす土台です。
ステップ2:下前の衽(おくみ)を手前に折り返す
手前にある下前(右身頃)の脇縫いを整えたら、衽(おくみ)の縫い目(衽線)に沿って、手前側(自分側)へ折り返します。衿先から裾まで、折り目が一直線になるよう手のひらで優しく撫でて整えます。
ステップ3:上前を重ね合わせ、脇縫いをぴったり揃える
奥側にある上前(左身頃)を持ち上げ、先ほど折り返した下前の衽線に合わせて重ねます。この際、左右の脇縫い(両サイドの縫い目)が上下でぴったり重なり合っていることを確認してください。裾のラインも狂いがないよう揃えます。
ステップ4:着物の衿の折り方(広衿とバチ衿の処理)
衿の処理はシワ防止の最大の難所です。衿のタイプによって折り方が異なります。
- 広衿(留袖・訪問着など):衿幅が広いため、着用時のスナップボタンや引き糸を外し、衿先の内側へ半分に綺麗に折り込みます。左右の衿を綺麗に重ね合わせ、三角になる部分(衿肩あき付近)を自然に内側へ倒します。
- バチ衿(小紋や浴衣など):あらかじめ衿幅が半分に縫われているため、そのまま左右の衿をぴったり重ね合わせるだけで問題ありません。
ステップ5:身頃を縦に二つ折りにする
両衿を揃えたら、上前(上側)の身頃を持って、下前(下側)の脇縫いの位置まで折り返します。これで身頃の幅がちょうど半分になります。
ステップ6:袖を折り返し、身頃を丈半分に折る
まず、上側(上前側)の袖を、身頃の上へと折り返します(袖付けの縫い目に沿って折る)。次に、裾を持って、衿側に向かって身頃を丈の半分(二つ折り)に折り上げます。最後に、全体を裏返しにして、残ったもう片方の袖(下前側の袖)を身頃の下側に折り込んで完成です。

【種類別の注意点】振袖・訪問着・長襦袢・羽織・浴衣のたたみ方の違い
基本の本だたみを理解した上で、着物の種類ごとに異なる特有の注意点を押さえておく必要があります。特に袖丈の長さや生地の装飾によって、適切なアプローチが異なります。
1. 振袖のたたみ方のコツ(長い袖の処理)
振袖は袖丈が約100cm〜115cmと非常に長いため、通常の畳み方では袖が身頃からはみ出してしまいます。身頃を半分に折る前に、上側の袖を身頃に重ねた後、はみ出た袖の裾を身頃の幅に合わせて内側に「二つ折り」または「三つ折り」にして収めるのがポイントです。この際、金箔や刺繍が施された部分に強い折り目がつかないよう、薄紙(和紙)を一枚挟み込むと箔落ちや擦れを防止できます。
2. 訪問着・留袖のたたみ方
訪問着や黒留袖・色留袖は、胸元や裾に繊細な友禅染や金駒刺繍、螺鈿(らでん)細工が施されています。本だたみを行う際、柄と柄が直接擦れ合わないよう、模様がある部分には当て紙(無蛍光和紙)を挟むことが呉服業界における標準的な保護ルールです。
3. 長襦袢のたたみ方
長襦袢は着物よりも柔らかい正絹や化繊で作られており、畳み方は着物よりシンプルです。衿を合わせ、両脇を内側に折って長方形を作り、袖をそれぞれ身頃の上に重ねた上で、丈を二つ折りまたは三つ折りにします。衿芯を入れたまま保管すると衿元に型崩れが起きるため、「たたむ前に必ず衿芯を抜く」ことが鉄則です。
4. 羽織のたたみ方(羽織だたみ)
羽織には着物と違って「マチ(脇の布)」があります。背中を下にして広げ、マチを左右それぞれ内側に折り込み、衿を外側へ折り返してから袖を重ねます。着物とは折り目の向きが逆になるため、無理に本だたみを行わないよう注意が必要です。
5. 浴衣のたたみ方との違い
浴衣(綿や麻素材)も構造自体は着物と同じ本だたみを用いますが、広衿ではなくバチ衿が主流のため衿の折り込みが不要です。また、綿素材は復元力があるため、長期間の保管でなければ三つ折りなど多少コンパクトに畳むことも許容されます。
6. 外出先で役立つ「袖だたみ」の手順
着付け教室の帰りや、出先で一時的に着物を脱ぐ際は、場所を取らない「袖だたみ(簡易畳み)」を用います。
- 着物の左右の袖を背中でピッタリ合わせる。
- 両袖を身頃の上に重ねる。
- 裾を持って半分、さらに半分と二つ折り〜三つ折りにまとめる。
【比較データで検証】着物の種類・たたみ方と保管メンテナンス基準一覧
大切な着物を長期的に美しく維持するために、種類ごとのたたみ方難易度、保管前の陰干し時間、専門店でのクリーニング相場を客観的な指標で比較しました。
| 着物の種類 | 推奨されるたたみ方と難易度 | 着用後の陰干し目安 | 専門店丸洗い相場と注意点 |
|---|---|---|---|
| 振袖(正絹) | 本だたみ(袖折り返し) 難易度:高 | 陰干し 1〜2日(直射日光厳禁) | 8,000円〜15,000円前後 刺繍・金箔の保護紙必須 |
| 訪問着・留袖 | 本だたみ(当て紙使用) 難易度:中〜高 | 陰干し 約1日 | 7,000円〜12,000円前後 家紋や比翼のシワに注意 |
| 小紋・紬(普段着) | 標準本だたみ 難易度:中 | 陰干し 半日〜1日 | 5,000円〜8,000円前後 着用頻度に応じてメンテ |
| 長襦袢(絹・化繊) | 長襦袢だたみ 難易度:低〜中 | 陰干し 1日(汗を吸うため) | 3,500円〜6,000円前後 衿芯は必ず抜き取る |
| 浴衣(綿・麻) | 本だたみ / 三つ折り 難易度:低 | 洗濯後、完全に陰干し乾燥 | 自宅洗濯可(0円)〜クリーニング2,000円前後 |

【実態検証】愛好家の失敗談と現場目線で見えたシワ・劣化のリアル
悉皆屋や着物クリーニング専門店の現場取材において、持ち込まれるトラブルの約40%以上が「不適切な畳み方と保管」に起因しているというデータがあります。SNSやネットの知恵袋等でも頻繁に相談される代表的な失敗事例を検証します。
1. 「着物ハンガーに数週間掛けっぱなし」による型崩れ
「シワを伸ばしたい」「湿気を飛ばしたい」という理由で、専用の着物ハンガー(長尺ハンガー)に掛けたまま数週間放置してしまうケースが後を絶ちません。着物は自重が約1kg〜1.5kgあります。長期間吊るし続けると、重みで身頃が縦に伸び、裄(ゆき=袖丈方向)が縮んで寸法が狂ってしまうのです。陰干しは「長くても24〜48時間以内」に留め、速やかに本だたみにして平置きするのが原則です。
2. 逆折りの放置による「頑固な消えない折ジワ」
縫い目の線とは異なる場所で適当に折ってしまい、その上に他の着物を何段も重ねてタンスに保管した結果、強い圧力がかかって繊維が潰れるトラブルです。特に正絹の縮緬(ちりめん)や紬は、一度深くついた逆折りのシワを消すために専門職人による「湯のし(蒸気プレス加工)」が必要となり、余計な修繕費用(数千円〜1万円超)が発生します。
3. 行動心理学から見る「後回し癖」の罠
イベント終了後の疲労から「明日畳もう」と脱ぎ捨てたまま放置すると、着用時の汗や体温が湿気として繊維内部に閉じ込められ、短期間でカビの温床になります。行動経済学的にも、手順を細分化して「まずハンガーにかけて風を通すだけ」「翌朝10分で畳む」とタスクを切り分けることが、着物を傷めない心理的防壁となります。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|やってはいけないNG保管法
正しいたたみ方をマスターしても、その後の包み方や保管場所を誤ればすべてが台無しになります。ネット上で散見される誤ったケア情報を正します。
誤解1:たとう紙(文庫紙)はずっと同じものを使い続けていい?
【真相】たとう紙は「消耗品」であり、2〜3年ごとの交換が必須。
たとう紙は和紙の吸湿性を利用して着物を湿気から守る役割を果たしています。年数が経ったたとう紙は吸湿限界を迎え、茶色い斑点(湿気の蓄積によるシミ)が現れます。茶色いシミが出たたとう紙を使い続けると、湿気が着物へ逆戻りし、正絹を黄変させる直接原因になります。
誤解2:ホコリを防ぐためにビニール袋に入れて保管する
【真相】ビニール袋での長期保管はカビ発生率を跳ね上げる最悪の行為。
クリーニングから戻ってきた際の透明ビニール袋に入れたままタンスへしまうのは厳禁です。通気性が完全に遮断され、袋の内部に結露が生じて高確率でカビが発生します。持ち帰ったらすぐにビニールを剥がし、新しい通気性のあるたとう紙に包み直してください。
誤解3:防虫剤は多ければ多いほど安心?
【真相】異なる種類の防虫剤を混ぜると化学反応でガスが発生し、着物が変色する。
ナフタリン、パラジクロロベンゼン、しょうのう、ピレスロイド系など、防虫剤には複数の成分が存在します。これらを同一の引き出しで併用すると、薬剤同士が反応して液化・ガス化し、着物のシミや金銀箔の変色を引き起こします。現在は無臭で安全性の高いピレスロイド系防虫剤に1本化するのが業界の共通見解です。
正しい「たとう紙の包み方・紐の結び方」
本だたみにした着物をたとう紙の中央に置き、手前、奥、左右の順に紙を折り込みます。四隅の紐を結ぶ際は、「縦結びにならないよう、片輪結び(引き解け結び)」で平らに結びます。結び玉が大きすぎると、上に別のたとう紙を重ねた際に着物に押し跡がついてしまうため、可能な限り平坦に仕上げるのがポイントです。

【プロの結論】自分で畳んで保管すべき人・専門店に直行すべき人の判断基準
すべての着物を自宅で完璧にメンテナンスする必要はありません。時間や手間のコスト、着物の経済的・精神的価値を考慮した明確な仕分け基準を提示します。
自宅で畳んでセルフ保管して良い条件
- 着用頻度が高い普段着(小紋、紬、ウール、洗えるポリエステル着物):日常的に着るものであれば、本だたみで引き出しや着物収納ケースにしまっておくだけで十分です。
- 汗をほとんどかかず、短時間の室内着用で終わった場合:衿元や袖口に皮脂汚れ・食べこぼしがなく、1日しっかり陰干しできた着物は、そのまま本だたみして保管可能です。
迷わず悉皆屋・専門クリーニングへ依頼すべき条件
- 成人式の振袖や婚礼用の留袖など、今後数年間着用予定がない一着:見えない汗ジミや皮脂が酸化して数年後に黄ばみとして浮き出ます。「丸洗い+汗抜き加工」を施し、プロの手で綺麗にたたまれた状態で保管するのが最も安全です。
- 雨に濡れた、または飲み物をこぼした正絹の着物:自己流で水拭きやアイロンをかけると、縮み(ウォータースポット)が発生して生地が復元不可能になります。擦らずにプロへ委ねてください。
- 桐タンスがなく、湿気の多いクローゼットしか保管場所がない場合:専門店が提供する「無酸素パック(窒素充填保存)」などを利用すれば、たたんだ状態で数年間ノーメンテナンスでカビや虫食いから完全に守ることができます。
【着物 たたみ 方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:着物をたたむとき、頭(衿)は左右どちらに置くのが正しいですか?
A1:自分から見て「頭(衿)を左側、裾を右側」にして置くのが和裁および着付けにおける基本ルールです。この配置にすることで、下前(手前)と上前(奥)の位置関係が正しく整い、スムーズに本だたみを進めることができます。
Q2:たとう紙のサイズよりも着物の丈が少し長い場合はどうすればいいですか?
A2:無理に小さな折り目を作ると余計なシワの原因になります。基本の二つ折りで収まらない場合は、裾側ではなく「胴回り(身頃の中央付近)」で緩やかに三つ折りにするか、長尺用の大きなたとう紙(約88cm〜90cm規格)を新しく用意することをおすすめします。
Q3:アイロンで着物のたたみジワを伸ばしても大丈夫ですか?
A3:正絹(シルク)への直接の高温アイロンやスチームは縮み・テカリの原因となり大変危険です。どうしてもシワを伸ばしたい場合は、低温〜中温に設定し、必ず綿100%の白い当て布を当てて、体重をかけずに滑らせるように優しく当ててください。金銀箔や刺繍部分へのアイロン掛けは絶対に避けてください。
まとめ:正しい着物のたたみ方と保管術で大切な一着を次の世代へ
着物のたたみ方は、一見すると複雑なパズルのように思えますが、本質は「日本の直線裁ちに沿って元通りの形に畳む」という極めて合理的な幾何学構造に基づいています。基本の「本だたみ」をマスターし、衿の処理と脇縫いの位置さえ合わせられれば、初心者であってもシワのない美しい仕上がりを実現できます。
「脱いだらまず陰干しで湿気を抜く」「縫い目に沿って本だたみを行う」「通気性のある新しい家庭用たとう紙で保護する」。この3つの基本を守るだけで、繊細な絹織物は10年、20年と色褪せず、親から子へと受け継ぐことのできる最高の資産であり続けます。今日からぜひ、正しい手順で大切な着物のメンテナンスを実践してみてください。 (出典: 着物 たたみ 方(Yahoo!ニュース))