シュールストレミングの味は美味い?まずい噂の真相と正しい食べ方
テレビ番組の罰ゲームや動画配信のリアクション企画で「世界一臭い缶詰」として恐れられるスウェーデン発祥のシュールストレミング(Surströmming)。強烈な腐敗臭ばかりがクローズアップされがちですが、北欧の現地では数百年にわたり愛され続ける歴史ある発酵保存食です。ネット上では「一口で吐き気を催すほどまずい」という阿鼻叫喚のレビューが溢れる一方で、「正しい下処理をして食べれば濃厚なアンチョビのようで絶品」という真逆の評価も存在します。
はたして、シュールストレミングの実際の味は本当に食べられないほど酷いものなのでしょうか。本稿では、匂いの科学的メカニズムから味覚の構造、現地スウェーデンの伝統的なレシピ、そして失敗しないための開封・調理手順まで、徹底的な取材と実食データをもとに解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:単体で食べると「強烈な塩辛さと酸味・発酵臭」が襲うが、本質は旨味アミノ酸が凝縮された高級アンチョビに近い発酵調味料である。
- 要点2:まずいと感じる最大の原因は「開缶時の飛沫」「内臓・骨の未処理」「トッピングなしの生食」という3大NG行為にある。
- 要点3:水中で安全に開封し、ジャガイモやサワークリームと共にクネッケブレッドで挟む伝統レシピを守れば、芳醇な発酵珍味として楽しめる。
【噂の真相を解明】シュールストレミングはどんな味?「まずい」と「美味」に二分する理由
シュールストレミングの味を一言で表現するなら、「極限まで塩気を強め、旨味成分を凝縮させたアンチョビペーストに強烈な発酵酸味を加えた味」です。春にバルト海で獲れた新鮮なバルトニシン(ストレミング)を薄い塩水に漬け込み、缶の中で加熱殺菌せずに嫌気性発酵を続けさせるため、魚のタンパク質が完全に分解されてペプチドやアミノ酸へと変化しています。
口に入れた瞬間に広がるのは、舌を刺すような強い塩味です。一般的な魚の缶詰とは異なり、身はトロトロに軟化しており、舌の上でほぐれると同時に濃厚な魚介のコクとグルタミン酸由来の旨味が爆発します。しかし、それと同時に鼻腔へ突き抜けるのが、下水や生ゴミを連想させる硫化水素系の発酵臭です。この「舌が感じる極上の旨味」と「鼻が捉える強烈な悪臭」の激しいギャップこそが、食べる者の脳を混乱させ、評価を真っ二つに分ける決定的な要因となっています。
「まずい」と叫ぶ人のほぼ100%は、缶から取り出した魚肉をそのまま丸ごと口に運んでいます。現地スウェーデン人であっても、生の切り身を単体で丸呑みすることは決してありません。シュールストレミングは単体で完結する料理ではなく、他の食材と組み合わせることで真価を発揮する「調味料を兼ねた具材」なのです。

【データ徹底比較】世界の発酵食品と比べる臭気指数・塩分・味わいの実態
シュールストレミングがどれほど突出した存在であるかを客観的に把握するため、臭気の測定単位である「アラバスター単位(Au)」や塩分濃度、味わいの特徴を世界の発酵珍味と比較検証しました。
| 食品名 | 臭気指数(Au) | 塩分濃度 / 主な味覚 | 編集部の見解・味わい評価 |
|---|---|---|---|
| シュールストレミング(スウェーデン) | 8,070 Au | 約8.0〜10.0% 強烈な塩味・濃厚なアミノ酸旨味 | くさやの6倍以上の数値。単体食いは不可能だが、乳製品や炭水化物との相乗効果は唯一無二。 |
| ホンオフェ(韓国・ガンギエイ発酵) | 6,230 Au | 約1.5〜2.5% 強烈なアンモニア刺激・淡白な旨味 | 揮発性アンモニアが鼻を刺す。涙が出る刺激だが、噛むほどにエイの身の甘みが広がる。 |
| くさや(焼きたて)(日本) | 1,267 Au | 約3.0〜4.5% 熟成魚肉の深いコクと素朴な塩気 | 日本人が親しみやすい魚醤系発酵。加熱により匂いが立つが、酒の肴としての完成度は極めて高い。 |
| 鮒寿司(ふなずし)(日本) | 486 Au | 約6.0〜8.0% 乳酸発酵による鋭い酸味と熟成チーズ風味 | 米と塩による乳酸発酵。匂いの絶対値は低いが、独特の酸味と熟成香が好みを分ける。 |
| 市販アンチョビフィレ(イタリア等) | 150〜300 Au | 約12.0〜15.0% オリーブ油の風味と鋭い塩気・旨味 | 発酵臭は穏やかで塩分が強い。シュールストレミングから悪臭ガスを抜き去った味の原型に近い。 |
数値が示す通り、シュールストレミングの臭気レベルは8,070 Auと群を抜いています。しかし、塩分濃度や遊離アミノ酸の含有比率に目を向けると、日本の鮒寿司やイタリアの高級アンチョビと非常に近い構成であることが分かります。つまり、悪臭ガスさえ適切に処理できれば、人間が本能的に好む「塩分+アミノ酸」の贅沢な塊なのです。
匂いの原因と成分を科学する|一口食べたらどうなるのか?
なぜここまで過激な悪臭が生まれるのか、その理由は製造工程における特殊な微生物環境にあります。ニシンを樽で塩漬けにする際、腐敗を防ぎつつ発酵を進めるため、塩分濃度が絶妙な約4%前後の薄い塩水に保たれます。この低塩環境下で活発に増殖するのが、酸素を嫌うハロアナエロビウム(Haloanaerobium)と呼ばれる嫌気性細菌です。
この細菌がニシンのタンパク質や脂質、糖分を分解する過程で、以下の強烈な揮発性化合物を大量に生成します。
- 硫化水素(H2S):温泉街や腐った卵のような刺激臭
- 酪酸(ブチル酸):熟成しすぎたチーズや腐敗したバター、足の裏の匂い
- プロピオン酸:ツンと刺すような刺激性の酸臭
- 酢酸:揮発性の強いお酢のような酸味臭
- メチルメルカプタン:腐ったタマネギや野菜の腐敗臭
缶詰内部ではこれらのガスが逃げ場を失い、高圧状態で充填されています。そのため、無防備に缶切りを入れると、発酵液を含んだ微細な飛沫が勢いよく周囲数メートルに噴出します。衣類や壁紙、家具に付着すると数週間から数ヶ月にわたって悪臭が取れなくなるため、航空会社では「高圧ガス爆発の危険性」および「貨物室汚染リスク」を理由に航空機への持ち込み・預け入れが国際的に全面禁止されています。
もし何の対策もせずに切り身をそのまま一口食べたらどうなるでしょうか。口腔内の体温によって悪臭成分が一気に気化し、鼻腔の奥にある嗅上皮を激しく直撃します。強烈な塩気とともに「下水や生ゴミを直接飲み込んでいる」という錯覚を脳が起こし、激しい嘔吐反射が引き起こされることになります。これが動画配信などで見られる典型的な惨劇の構造です。

【現地スウェーデン直伝】美味しい食べ方とクネッケブレッドの伝統レシピ
スウェーデン北部において、毎年8月の第3木曜日は「シュールストレミングの解禁日(Surströmmingspremiär)」として親しまれ、親族や友人が屋外に集まってパーティーを開くのが夏の風物詩です。現地の人々が実践する、悪臭を完全に抑え込んで極上の味わいを引き出す正しい作法を解説します。
ステップ1:【最重要】水中での開け方と下処理
缶を開ける際は、絶対に屋内で行ってはいけません。風通しの良い屋外で、水をたっぷり張ったバケツの中に缶を完全に沈めた状態で開缶します。これにより、内部の高圧ガスが噴出しても飛沫が水に吸収され、周囲への飛散を100%防ぐことができます。
開缶後は速やかに身を取り出し、流水または冷たい炭酸水(ビールでも可)で表面の発酵液を優しく洗い流します。その後、キッチンペーパーで水気を拭き取り、背骨と内臓、頭部をナイフで丁寧に取り除いて、薄いフィレ状のピンク色の身だけを一口大に切り分けます。悪臭成分の9割は発酵液と内臓に集中しているため、この下処理だけで匂いは劇的に軽減されます。
ステップ2:伝統のサンドイッチ「クネッケブレッド」レシピ
現地で最もオーソドックスな食べ方は、スウェーデン伝統の平焼きパン「トゥンブロード(Tunnbröd)」やクリスプブレッド「クネッケブレッド(Knäckebröd)」を用いたオープンサンドです。
- ベース:クネッケブレッドに無塩バターを厚めに塗る(油脂の膜が臭みをブロックする)。
- 第1層:茹でて輪切りにした小粒のジャガイモ(現地ではマンデルポタティスと呼ばれる甘みのある品種)。
- 第2層:細かく刻んだシュールストレミングのフィレを少量(1〜2片)だけ載せる。
- 第3層:みじん切りにした赤玉ねぎ、またはチャイブ(西洋アサツキ)をたっぷり散らす。
- 仕上げ:サワークリーム(現地ではグレーマス)をスプーン1杯のせ、フレッシュなディルを添える。
この組み合わせで口に運ぶと、まずサワークリームの乳脂肪とバターが魚肉を包み込み、悪臭成分をマスキングします。続いてジャガイモのほくほくとしたデンプンが強すぎる塩気をまろやかに中和し、赤玉ねぎの辛味とディルの爽快感が後味を完璧に引き締めます。噛みしめるほどに、熟成されたニシンの芳醇な旨味が広がり、北欧の蒸留酒「アクアビット(Akvavit)」や冷えたピルスナービールが止まらなくなる至高の酒肴へと変貌を遂げます。
【実態検証】ネットの反応と評判|罰ゲームの悲劇と愛好家の熱狂
日本国内のSNSや掲示板(5ちゃんねる)、動画配信サイト、質問プラットフォーム(Yahoo!知恵袋)におけるリアルな声を調査すると、体験者のアプローチによって反応が完全に二極化している実態が浮き彫りになります。
【否定派・阿鼻叫喚の声(未調理・室内開封のケース)】
「部屋の中で開けてしまい、カーテンと絨毯を全とっかえする羽目になった。完全にドブの匂い。」
「罰ゲームでそのまま一切れ食べさせられたが、塩辛すぎて舌が痺れ、後から生ゴミのゲップが上がってきて一日中地獄だった。」
「友人宅の庭で開けたら近所から異臭騒ぎで通報されかけた。二度と買わない。」
【肯定派・グルメ愛好家の声(正しい下処理とペアリングのケース)】
「しっかり水洗いして内臓を取って、マヨネーズとオニオンと一緒にバゲットに挟んだら普通に美味い。上質なアンチョビサンド。」
「塩分とアミノ酸の塊だから、スライスしたジャガイモにサワークリームと一緒にのせてウォッカで流し込むと最高にキマる。」
「くさやと同じで、発酵臭の壁を越えた先にある旨味の深さは病みつきになる。酒飲みにはたまらない。」
この検証結果からも明らかなように、悪評の根源は「食品としての不味さ」ではなく、「取り扱い手順の完全な誤解」に起因しています。正しい知識を持たずに好奇心だけで手を出すと大惨事になりますが、食文化への敬意と正しい調理法を守れば、極めて奥深いガストロノミー体験を提供してくれるのです。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
ネット上でまことしやかに囁かれているシュールストレミングの噂について、事実無根の誤解を正しく検証します。
誤解1:缶詰がパンパンに膨らんでいるのは「腐敗事故品」である
【真相】:通常の缶詰であれば膨張は細菌汚染による不良品ですが、シュールストレミングにおいては「正常に発酵が進んでいる証拠」です。加熱殺菌を行わないため、缶の中で乳酸菌や嫌気性菌が生きて炭酸ガスや硫化水素を排出し続けています。現地では缶が丸く膨らみ、手で押してもへこまない状態こそが食べ頃とされています。
誤解2:食べると胃腸を壊して激しい食中毒になる
【真相】:強烈な匂いから毒性を疑われがちですが、高濃度の塩分と生成された乳酸によってpHが酸性に保たれているため、ボツリヌス菌や病原性大腸菌などの危険な食中毒菌は増殖できません。適切に保存されていた未開封品であれば、健康な成人が食べて腹痛を起こす医学的根拠はありません(ただし過度な塩分摂取による喉の渇きや胃もたれは起こり得ます)。
誤解3:常温で何年も保存できる
【真相】:一般的な缶詰と異なり、常温放置は厳禁です。常温に置くと発酵が暴走して身が完全にドロドロに溶け去り、最終的には缶の継ぎ目からガスや液が漏洩・破裂するリスクがあります。購入後は必ず冷蔵庫(10℃以下、理想は2〜6℃)で要冷蔵保管しなければなりません。
【プロの結論】食文化論と味覚心理学から見る価値|挑戦すべき人の判断基準
文化人類学および味覚心理学の観点から見れば、シュールストレミングは極北の過酷な冬を生き抜くために生み出された「人類の知恵の結晶」です。塩が極めて貴重だった中世スウェーデンにおいて、最小限の塩で魚を長期保存するために乳酸発酵を活用したのが始まりでした。
心理学における「獲得嗜好(Acquired Taste)」が示す通り、人間は本来、腐敗臭や強烈な苦味・酸味を本能的に毒物として警戒します。しかし、それを安全に摂取できる経験を重ねることで、脳内で「強烈な刺激=極上の報酬(旨味)」へと認知が書き換わります。ブルーチーズ、くさや、ドリアン、納豆が愛好家にとって至高の美味となるのと全く同じ構造です。
挑戦に向いている人・おすすめできる条件
- くさや、鮒寿司、ホンオフェ、ブルーチーズなどの強力な発酵食品を好んで食べる人
- キャンプや広い庭など、屋外で安全に開缶・調理できる環境を確保できる人
- レシピ通りにサワークリーム、玉ねぎ、ジャガイモなどの副食材を揃えて調理する手間を惜しまない人
- 珍しい海外の伝統食文化を知識と舌の両方で体験したいフードジャーナリスト志向の人
購入を避けるべき人・慎重になるべき条件
- マンションやアパートなど、集合住宅の室内・ベランダでしか開けられない人(近隣トラブルの原因になります)
- 動画やSNSのウケ狙いだけで、下処理をせずそのまま食べる罰ゲーム用途の人
- 魚介の生臭さや強い塩分、独特の発酵臭全般がそもそも苦手な人
- 開封後の後片付けやゴミ処理(密閉廃棄)を徹底する自信がない人
【シュールストレミング 味】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本国内で通販購入する場合の価格相場や入手方法は?
A1:楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなどの大手ECサイトや、北欧食材専門の輸入代理店で購入可能です。航空輸送が禁止されているためスウェーデンから船便で厳重に冷蔵輸送されており、1缶(約300〜400g)あたりの価格相場は7,000円〜12,000円前後と高級珍味の価格帯となっています。季節や輸入ロットによって在庫が変動するため、春〜秋の入荷状況を確認することをおすすめします。
Q2:もし衣服や部屋に匂いが付着してしまった場合の消臭方法は?
A2:硫化水素やメルカプタンなどの酸性悪臭成分には、弱アルカリ性の重曹水やセスキ炭酸ソーダのつけ置き洗いが有効です。手肌に付いた場合は、レモン汁やクエン酸水で洗った後にステンレスソープで擦ると匂いが中和されます。部屋の空間には一般的な消臭スプレーはほぼ効かないため、オゾン脱臭機の稼働や、換気を続けながら塩素系漂白剤を薄めた液での拭き掃除が必要になります。
Q3:缶を開けたら中身が液体ばかりで身が崩れていましたが、腐っていますか?
A3:腐敗ではなく、発酵が進みすぎてニシンのタンパク質が自己消化酵素によって液状化した状態です。賞味期限内であっても高温環境に置かれると身が溶けてしまいます。食べることは可能ですが、食感を楽しみたい場合は製造年月日の新しいものを選び、購入後は一貫してチルド冷蔵保管された個体を食すのが鉄則です。
まとめ:文化を理解すれば「究極の発酵珍味」へと変わる
世界一臭い缶詰というセンセーショナルな肩書きに覆い隠されがちなシュールストレミングですが、その正体は「北欧の厳しい自然が生んだ、旨味アミノ酸の宝庫」です。単体で食べれば過激な塩分と臭気で罰ゲームにしかなりませんが、水中で丁寧に開缶し、骨と内臓を外し、ジャガイモや乳製品とともに味わえば、他では絶対に体験できない重厚な発酵の妙を堪能できます。
未知の食文化に挑戦する際は、ネット上の表面的なリアクションに惑わされることなく、現地で培われた伝統の作法を遵守することが何よりも大切です。万全の準備と敬意を持って向き合えば、あなたの味覚の地平を大きく広げる忘れられない美食体験となるはずです。 (出典: シュールストレミング 味(Yahoo!ニュース))